第61回 有馬記念(G1) 結果コラム

【単勝人気順番通りで大団円?】

最終的に単勝1番人気となったサトノダイヤモンドがゴール前の競り合いを制して優勝した...と、大略するのは簡単。ただし、同馬が優勝した要因が単純な馬の能力だけでない事は多くの人が気付いただろう。

一番分かりやすい点は、向こう正面で同馬がいつもと違って番手追走のキタサンブラックの直後に位置取りした事。最後の着差を考えれば、この位置を向こう正面の時点で押さえていなかったら届かずはもちろん下手をすれば3着だったかも知れない。そして、これを可能にした馬の能力もさる事ながら、馬の能力以上に同馬を制御したルメールの実力に感嘆せざるを得ない。やはり本物のプロジョッキーはレベルが違っている事を改めて確認させられた。

次いで、惜しくもゴール前で交わされてしまったキタサンブラックだが、こちらもさすがの能力の高さを示したと言える。これは騎乗した武豊がレースコメントでも語ったように、向こう正面から3コーナーに掛けてサトノノブレスに突かれた事でもう一息入れられる時間がなくなったためほんの僅かに逃げ馬を捕まえるタイミングが早くなった事が最後の最後に交わされた要因である。

このコメントを聞いた時、私だけでなく多くの人が今年の凱旋門賞を思い出したのではないだろうか。ついに中央競馬も欧州競馬のように一目で分かる集団戦術を取る時代に入ったのかも知れない。ただし、集団戦術は援護する方のジョッキーにも腕がないと結果ただの早仕掛けになるので、その点今回の池江厩舎とサトノはノブレスの鞍上にシュミノーを配したのは完璧だったと言える。今の日本人ジョッキーの騎乗意識ではあと100年は掛かるだろうが、是非とも本物のプロの騎乗をよく学んで100年後につなげて欲しいと思った。何しろ今の中央ジョッキーは、第12期生以降の間違ったジョッキーの管理方法のせいで敢闘精神と言う根本面で先ず世界から50年遅れてしまっているから。これは、今回の有馬記念でも横山典弘がずっとインの絶好位置を進みながら直線では追う姿勢すら見せずに下がって行ったのを見れば一目で分かるだろう。

人気通りながら、3着になったゴールドアクターと吉田隼人のコンビには正直驚きの感がある。多くの人は今回一番健闘したのはこのコンビだと思うだろう。だが私は、前走のJCでキタサンブラックを負かしに行く競馬をしなかったので、やはりこの厩舎とジョッキーではレベルの問題でまたタレる競馬をすると思っていた。ところが今回は、まるで人が変わったようにちゃんと武豊を負かそうとして本気で競り駆けに行った。やれば出来るならJCでもやる気出せよと言いたいが、これがJCと有馬記念の違いだと思えば納得できる部分もある。JCは国を代表する国際競争なので、このレベルの厩舎とジョッキーが好走する事など主催者は望んでいない。一過性の馬と未熟者よりは、ボンクラでも主催者が普段から優遇しているジョッキーを好走させる手を打つのが今の中央の政策。だからボンクラが3着に来れるのである。その点有馬記念は時期的な事情もあってどんな人気馬でも負けておかしくないレースであり、昨年の勝ち馬ならなおさらここまで走っても一向におかしくない。だからこそファンも3番人気に推したのである。よって、もしも今回2着だったら一番健闘したと言えただろうが3着では特別健闘したとは思えない。同馬よりも4着の池添の方が高評価出来るはず。

いずれにしても大昔ならともかく、人気順通りのワンツースリーは有馬記念としては珍しい事象であり、それを可能にした要因が池江・サトノの集団戦略だった点に注目と考察を深めざるを得ない。もしもサトノノブレスが日本人ジョッキーだったらこの結果にはならず、半ば飽きの見えるサブちゃん締めで終わっていただろうから。

ちなみに、同厩舎や同馬主が連携して自厩舎や馬主を勝たせるようにするのは「八百長」とは言わない。勝たせるためにあからさまに馬をぶつけたり、前を壁にしてわざとスローダウンして相手有力馬を潰したらもちろん八百長だが、今回のシュミノーのようにレースの流れは崩さずに相手に楽をさせない援護は技がなければ出来ない芸当であり、これこそが本物のプロの技である。だからルメールがゴール後にシュミノーと手を合わせたのを見て『流石だ』と思った。これを学校で教える事は出来ないし、出来ても教える必要もない。これは先ず馬を十全に御せるようになって初めて出来るかどうかの問題であり、残念ながら今の日本人ジョッキーで出来るのは元地方の3人(岩田・内田博・戸崎)と、もしかしたら出来るかも知れない武豊の4人だけしかいない。

これらの技は競馬学校が生まれる前のジョッキーの方が遥かに多かった。つまり昔の方が実戦における技術は今のジョッキーより遥かに上手い者が多かったと言える。逆にこれくらい出来なければ馬に乗るチャンスが少なかったためもある。現在は圧倒的に馬の数が増えたお陰で全体的な騎乗機会が増えた反面、馬を御すだけで手一杯なジョッキーばかりなってしまった。これは学校を作った事の弊害であり、門戸を広くすべきは直接馬と接する厩舎でなければいけないのに先ず学校入学が優先され、まだ未熟な状態で実戦に乗るため自然と流れに乗るだけの騎乗を覚えるだけにジョッキーが追われてしまっているからだ。その結果50才のベテランが技術の点で23才のシュミノーに劣ってしまうまでになっている。その50才が横山典弘なのだから世界のジョッキーは褒め殺ししてでも来日したくなって当然。上手くいけば自国の数年分を短期免許中に稼げるのだから。この低レベル化に歯止めを掛けないといずれは外人がいないとお粗末な競馬ばかりしか出来ない状況になるだろう。実際にはすでに成りかかっていると言える。

2016年の終わりを迎え、もっとよりまともなジョッキーたちが活躍出来る仕組みに競馬が変わって行くことを願ってやまない!